さて、猫にほとんど触れられないまま30分が過ぎた私であったが、こういうお客もそれなりに満足できるよう、秘密兵器を用意してあるあたり、さすが商売だ。
一人一個だけ100円で買うことが許されている「ねこのおやつ」。
数センチ四方の透明のビニール袋に、ちいさなカリカリが6、7個ほどと、細長いスルメのようなジャーキーが3、4本入っている。
すずめの涙というべきだろう。
このおやつの使用を、あと10分、いやあとまだ5分は…、と我慢していた私だったが、孤独にたまりかね、ついに袋を開ける。
すると、猫、寄ってくる。
おおー。乗り出して前足を乗せてくる。
ほかの猫も寄ってくる。
おおーおおー幸せ〜
ていうか大忙し!!!
そして、1分後。
エサの切れ目が縁の切れ目(涙)。
たったの1分で猫に去られた私を不憫に思った夫が、自分のエサを半分以上、私にくれるという。
ありがとう夫。
ふと、ほかの人を見ると、エサをなかなかあげずに、みせびらかしてじらし、膝の上におびきよせようとしている。
エサを小さくちぎってこまかーくしてあげている人も。
はは〜んそうすればよかったのか。
ガッテン。
私は、ひそかにビニール袋の中の小さなカリカリを、一つ一つ、くだいて小さなピースにする。
こうすれば10個のエサも30個だ。
いざ解禁。
膝のせ成功!

これはククルちゃんという猫。「ラパーム」という種類らしい。ボアボアの、独特の手触り。
キター、子猫! 子猫接近
うほ、うほほ ちっちゃーい!
この子猫は、いちごちゃんというお名前。斑点がいちごみたい。エジプト産の、の由緒正しいお嬢さんだとのこと。
あまりの可愛さに、なけなしのエサは、膝に居ついてくれたいちごちゃんに、早々にあげ尽くす。
すると、手についた粉を長いことペロペロしてくれるいちごちゃん。

あ〜幸せ〜 るるらら〜ん
ということで、3分余りのハニータイムは、至福のうちに終了したのであった。
思うに、なかなか猫に触れない前半の長時間があるからこそ、おやつタイムでは急激に押し寄せるダムの決壊のように、脳内物質ドーパミンが放出されるのだろう。
さて残り10分。
冷静になって眺めると、そこ、ここで、おやつタイムがくりひろげられている。
エサをこれでもかというぐらい小さくくだいている人。
エサを自分の目の前まで持ってきて、猫をすごく近々と接視しようとしている人。
そして、「痛ったあーい」と聞こえてくる悲鳴…
見ると、猫がエサに食いついてからも、その小さなエサを親指と人差し指の爪にしっかりとつかみ、なかなか猫に食わせまいとしている(笑)。
向こうからも、同類なのか、「イテ、痛テテ」と男性の声…。
君らはそうまでして猫と触れ合いたいか。
君らはみみっちくエサを砕いて、猫に怒られて噛まれてまで、またここにきて、この猫たちと触れ合いたいか。
きっと彼らはまた来るのだろう。
そして私もまた訪れるだろう。
福岡から。
Cat cafe きゃりこ。
次に来るときは、きっと、いちごちゃんは大きくなって成猫だろうな。
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